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ステージは最高のセラピーでもある

一日のかなり長い時間を仕事に費やしている私は、よく「趣味はないんですか?」と聞かれることがあります。自分を振り返ったときに、あえて趣味らしいものを考えてみると、それは「舞台を観ること」ではないかと思います。
舞台が好きで、舞台を観るためだけに一人でニューヨークやラスベガスに足を運んだりします。

そして、素晴らしい舞台は、“観るもの”ではなく、“浴びるような”感覚です。
つまり、客観的に「いい舞台だわ」などと思いながら観ている舞台は、そんなに私にとってはいい舞台ではない。舞台から溢れるような人のエネルギーを感じて、立ち上がることすらできない。そんな舞台が最高なのです。

9.11NY同時多発テロ。私はあの世界を震撼させたテロのあと、すぐにニューヨークに飛びました。阪神淡路大震災の経験から、大きな災害における心のケアをコミットメントしていた私は、自分が学んだ場所でもあり、また多くの心理カウンセラーの友人たちがいる場所でもあるニューヨークへ向かって、迷わず出発したのでした。

いつもは満席のはずの「東京―ニューヨーク便」の機内はガラガラ。ニューヨークのジョン・F・ケネディ空港に辿り着くと、信じがたいことに武装した兵士がセキュリティをしていました。全く違う街に来たようです。ニューヨークがゴーストタウンになってしまったような気がしたものです。
ところが、タイムズスクウェアがあるブロードウェイに来てみると、たくさんの人たちがブロードウェイを観に集まっているのです。私はそのことに驚き感動しました。

ブロードウェイで歌って踊るアクターたちは、「ニューヨークの火を消さない、ブロードウェイを観に来てください」と街中で歌っていました。すごいエネルギーがブロードウェイを包んでいました。

大きな事件やとても辛い出来事があっても、舞台を演じているアクターたちが、自分たちの街を守り、私たちの心を守ってくれている。そんな気がして、鳥肌が立つくらい感動しました。映画やテレビにはとてもできない何か強い力が、舞台・ライブという、目の前に人がいるエンターテイメントの中にはある。その強いエネルギーを感じたのです。

地下鉄に乗ってダウンタウンエリアへ、崩れ落ちたツインタワーを見に行きました。
私が行ったときには、まだ遺体の捜索活動も続いていました。折れ曲がった鉄骨、焼け焦げた臭い、街中に飛び散る粉塵・・・。これがあのウォールストリートを中心とする高級金融街のすぐ側であるとは全く信じられません。
阪神淡路大震災の焼け焦げた街に立ったときと、同じ臭いがしました。異常な熱でたくさんの物が瞬時に焼け焦げた臭い。

ツインタワーの前では祈りを捧げる人、泣きながら冥福を祈り続ける歌声、手向けられた花束、世界中からのメッセージ・・・。様々なものがそこには溢れていました。胸が苦しく本当に痛くなりました。
でもたくさんのメッセージの中に日本語はありませんでした。
当時日本では多くの企業が渡米禁止令を出し、ニューヨークは危ないので(炭疽菌問題や次なるテロの噂が飛び交っていましたから)多くの人がニューヨークを避けていたのです。そこで私は、ささやかながら日本語のメッセージを書いて、そこに置きました。

ツインタワーの前で数時間立ち尽くし、夕闇がまわりを包み始めて、ホテルに帰ろうと歩こうとすると、1ブロック歩いただけで足が動かなくなりました。
「これは、よくないな」
すぐさまタクシーを拾ってホテルに戻ろうとしました。でも、少し考えて、こう告げました。
「ブロードウェイに行ってください。」

このままホテルに帰ってもすごいダメージで眠れそうにもないし、食べられそうにもない。
ただただ一人で、このなんとも言えない苦しい思いを抱えたまま一晩を過ごすことがわかっていたので、そのままブロードウェイの舞台を観に行きました。ステージのエネルギーを浴びたい、歩く力を、生きる力を取り戻したい。そして・・・

あのときの舞台の力を、私は一生忘れることはありません。

演目は『美女と野獣』。ディズニーの可愛らしいミュージカルでした。
物語では呪いのためにティーカップやカーペットに変えられたお城の住人たちが、驚くようなダンスのステップで踊っていました。歌があり、ダンスがあり、演じる側のエネルギー。まるで違う場所にあっという間に引きずり込まれていきました。
あっという間に時間が過ぎました。拍手とスタンディングオベーション、感動!そして私はそのあと、サクサクと歩きながらホテルに帰り、ぐっすりと眠ることができたのです。人間のもつ力はすごい。そして舞台のもつ力には素晴らしいものがあります。

そんな体験を通じて、私はすっかりステージに夢中です。ラスベガスでは専用ホールですごいステージが観られると聞くと、居てもたってもいられません。ラスベガスに女一人で出かけるときは、入国手続きの時にちょっと変な目で見られながら、一人でとってもリッチなホテルに泊まることもあります。もちろんラスベガスでは、『シルク・ドゥ・ソレイユ』やホワイトタイガーなどのエンターテイメントを観るのが目的。人間の可能性とその演出の素晴らしさに、いつも衝撃を受けます。ラスベガスのステージは、常に今。現在形。新しい演出を次から次へと繰り広げています。

演出や舞台にルールなどなく、人間の思いがイマジネーションしたものがそのまんま舞台に形となって現れてくる。そんなラスベガスのステージのパワーには、いつも圧倒されます。

私が毎年ニューヨークに行く時の定番となったブロードウェイの『スパイダーマン』は、人間のパフォーマンスと演出が素晴らしい大アクション舞台でした。
『ウィキッド』は魔女役のソプラノの歌声だけで人はこんなに心洗われるものかと、改めて人間の声の力に感動しました。
『ファントム・オブ・ジ・オペラ』は歌と演技力が最高で、最後の「I love you」の一言だけで、いつも涙が流れるような、そんな幻想的な世界に私たちを連れていってくれます。何度観てもまた観たくなる素晴らしい名作です。

ステージには人を元気にする素晴らしい力があります。最近はステージがなかなか人気がないと言われていますが、そうではなくて、きっと、まだまだ日本人はステージの見方や感じ方をわかっていないのだと思います。
リアルな人間の力をもっと浴びて、もっとパワーが出ることを感じてみるのは、とても大切なことだと思います。

今年もまた、どんなステージと出会えるのか、今からワクワクしています。
ステージは最高のセラピーである。
私も自分をセラピーしながら、また舞台を観て多くの感動を共有したいと思っています。

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